Sweet Smell 10・11月号

今回は社会的問題となっている危険ドラッグを取り上げます。アロマセラピー仲間からは「精油の売れ行きが減った」「アロマのひどいものが、脱法ハーブなのでしょと言われた」との声を聞きました。アロマと危険ドラッグとが誤解されており強い憤りを感じています。

危険ドラッグとは"乾燥植物片に合成薬物が添加されることにより、麻薬などの規制薬物と類似した作用があるのに規制を受けていない薬物系製品"が主な概念です。10年ほど前より合法ハーブ→違法ハーブ→脱法ハーブ→危険ドラッグとネーミングが猫の目のように変化しています。これは当初、業者が「合法」と見做していたものを、警察が「違法」と判断しましたが、実際には法的規制がなかったため、グレー的に「脱法」と呼んでいました。しかしこれだと法を逸脱しているというより、法的問題を脱している、免れているという印象があるため、「危険ドラッグ」という呼称になった経緯があります。

症状としては合成カンナビノイドには注意集中困難、認知能力低下、反射行動の遅れ、めまいなどが、また神経興奮薬物には精神興奮、不注意、時間感覚の歪みなどが、そして幻覚系薬物には視覚・聴覚・認識の歪みなどがあります。他に副作用として昏睡・朦朧・錯乱、歩行困難、呼吸困難、痙攣、嘔吐などがあります。10〜30歳代の青少年層に多く使用が見られ、過去の脱法ドラッグとしてはマジックマッシュルームがよく知られています。

薬物規制は現在、@無承認無許可医薬品の販売等 A指定薬物:中枢神経系の興奮及び抑制や幻覚作用を有し身体上の危害が発生する恐れがある薬物 B規制薬物:麻薬、覚せい剤、あへんなど、の3段階があります。当初、無承認無許可医薬品の販売は違法と知るや、医薬品の販売ではないとの如く、お香、バスアロマ、バスソルトという形で販売が続けられました。そこで対策として平成18年に薬事法が改正されました。即ち既存の麻薬と同等の有害性・依存性などが科学的に証明され、国内の流通実態から乱用の恐れがあるとみなされた有害なドラッグは麻薬指定され、指定された薬物の輸入、製造、譲渡、所持、使用が違法となりました。しかしこれらの確認には数年を要するのが難点です。

現在、指定薬物は以前の31物質に最近新たに17物質が追加され平成24年12月現在90物質があります。それに対して麻薬は、麻薬及び向精神薬取締法2条1号で定められたヘロイン(ジアセチルモルヒネ)、コカイン、モルヒネなど74種類(+麻薬原料植物3種)に、LSD、ケタミンなど84物質(+麻薬原料植物2種)を加えた158種があります。

抜本的対策としては包括(骨格)規制があります。これは物質の基本的な化学構造(基本構造)をとらえ、同じ基本骨格を持つ一群の物質をまとめて規制対象とする方式で、例えば図の基本骨格を持つ、R1〜4部分に一定の化学的な変更を加えた物質全てが規制対象となります。問題点は規制対象の明確性、有害性証明の困難さ、経費負担などです。

「あぶないハーブ−脱法ドラッグ新時代−」著者の小森榮先生は薬物問題の第一人者で、昨年の日本アロマセラピー学会熊本総会にて市民公開講座を担当頂いた縁で懇意にさせて頂いており、このコラムの文章、写真は小森先生からお借りしたスライドを参考とさせて頂きました。憂慮な日々から逃れるためにも、一日も早い撲滅を望む次第です。