今回のテーマはコロナ禍で外食が減ったので家飲み定番のビールについてです。
香り、コク・キレなどより、3種類に大別しました。全て飲んだ上で自分の好みで判定し、ランキング順に列挙しています。
ビールの主原料は大麦麦芽で、大麦を麦芽にするには一度水に浸漬して発芽させた後に水分を飛ばすため高温で乾燥させる焙煎をします。そこで成分変化やメイラード反応がおこり独特の香気が作られます。
ビールの香りは@原料である麦芽、A発酵された酵母、B加えたホップ、などより105の化合物が関与し、532の香気成分が同定されています。
まず麦芽や酵母の香り成分はアルコール、エステル類(酢酸エチル、酢酸イソアミル)などが代表的で脳波検査におけるα波ゆらぎリズム度の実験結果より、いわゆる“ゆらぎ効果”と言われるリラックス効果が認められています。またビール銘柄別でもリラックス感に差を認めたそうですが、文献上では未公表になっており多少気になるところです(笑)。
次にビール独特の苦みを持つホップは樹脂や精油を大量に含みリナロール、ミルセン、αフムレンに代表されるテルペン類、エステル類、アルデヒド類、ケトン類などが主な芳香成分です。また先述のゆらぎ感とホップの香りの強さとは相関するそうです。苦み成分は疎水性(水にはほとんど溶けずに油によく溶ける物質)が主であり、最近は従来のビターホップに対してフレーバーホップの品種改良が微量分析と官能検査をベースとして進んでいるそうです。
またそのホップに含まれるイソα酸が及ぼす影響として、アルツハイマーのモデルマウスにおいて老人班の減少と記憶障害の改善が観察された報告もあります。大いにビールを飲む気が出てきました(笑)。
また長期間の保存では老化臭として人間同様にノネナールが発生するというのはユニークと思いました。
この手の企画では缶コーヒー(SweetSmell2017年4・5月号参照)の方が準備は大変でしたが楽しかったというのが率直な感想です。
柑橘系(今でいう地ビール)の種類が多いのが意外でしたが、結局クラシカルなビールが自分は好みです。しかしゴクゴク飲む爽快感からのリフレッシュ作用と、上述したリラックス効果と、両方バランスよく持ち合わせる唯一のアルコールドリンクと言えるのではないでしょうか。
<参考文献>
小島英敏「ビールの香りとリラックス効果」AROMA RESEARCHNo61(2015)
金田弘挙「ビール中エステル香気のリラックス効果」AROMA RESEARCHNo24(2005)
サッポロビール株式会社「ビールの香りの最前線」AROMA RESEARCHNo72(2017)
高島明彦「ビールとアルツハイマー病」AROMA RESEARCHNo70(2017)
蛸井潔「酒類における香りへの取り組み過去・現在・未来」AROMA RESEARCHNo56(2013)
倉橋隆「トコトンやさしい味の本」P22