Sweet Smell 4・5月号

先日家族と雲仙温泉に旅行しました。旅亭半水慮(はんずいりょ)という旅館でしたが、これほど香りが鮮烈に印象づけられたのは初めてでした。

まず客室入り口で端麗な匂い。これは久留米天年堂の製作による旅館オリジナルのお香"花の舞"で、おもに白檀(びゃくだん)とバニラ、その他の香りの配合とのことでした。またトイレでも芳醇な匂い。これは京都松栄堂の香り袋"誰が袖"で 白檀(サンダルウッド)、竜脳、丁子(クローブ)、桂皮(シナモン)からなるそうです。食事では焚き合わせが柚子の香り満載でした。そして内風呂は当然(?)檜風呂でヒノキの香り。純和風な離れの客室(1Fと地下)の雰囲気に各種香りが芸術的に融合していました。

香水、お香の原料になるものに香木があり、沈香(じんこう)と白檀が双璧です。沈香は、主に東南アジアに分布しているジンチョウゲ科で水に沈む重い比重の香木です。これは、風雨や害虫などによって木部を侵されたときに分泌された樹脂が、長い歳月をかけて腐食せずに残り、芳香を放つ香木へと変化したものです。香り成分は主にジンコール(セスキテルペンアルコール)です。ベトナム産で、素性、樹脂、香気が最高級とされる沈香は伽羅(きゃら)と呼ばれます。また白檀は熱帯地域に分布するビャクダン科でそれ自体が芳香を発することができる材で、香り成分は主にα-サンタロール(セスキテルペンアルコール)です。香木は元来わが国で産することはなく、主な産地である熱帯雨林地帯では自然保護が求められるようになったため供給は不安定な状態にあります。加えて香木の化学的研究の方も費用、保存、品質変化の点でかなり難渋しているそうです。

これらの香りを嗅ぐことや、関連する文献を読んでいるうちに、NHK大河ドラマの篤姫の"香あそび"のシーンを思い出しました。香が中国から日本に伝来したのは6世紀頃で、室町時代に香道という芸術文化まで発展しました。そのうち当セミナーでも"香あそび"が実現できればと思っています。貴重な古来文化は後世に引き継がれてほしいものです。