第77回 令和元年5月30日(木)14:30〜18:00
鰹節のにおい in枕崎(参加者10名)
カネモ鰹節店(枕崎市)
▼工場見学
今回は大正2年創業で現在まで4代続いているカネモ鰹節店にお邪魔しました。創業者の名前の頭文字“モ”に、俗に商売が曲尺のようにまっすぐで手本となるように、また金(カネ)をかけてあると言われる“┐”の形を組み合わせた屋号となっています。立石雄二代表の案内で小1時間ほど見学させて頂きました。冷凍された鰹が多々並んでいる姿は壮観です。
丸1日かけてじっくり解凍するために冬は1日4回水の入れ替えをするそうですが、夏は1回で済むそうです。
まず頭切り(びんた=頭は加工組合に運ばれるそうです)、内臓取り、三枚卸しをします。その後、身を4分割にする合い断、身を煮籠に入れる籠立て、巨大な寸胴釜に入れて茹でる煮熟(しゃじゅく)を順に行います。この際出来る煮汁がかつおのエキスで、それを濃縮した食材を“せんじ”と言います。
▼骨抜き
それから骨抜きをします。工場内でその作業に黙々と従事するのはフィリピンからの外国就労の方々で、なんと40人もいるそうです。朝5時から仕事開始にも関わらず3〜5年間もお勤めされるそうです。
▼焙乾
次は焙乾(ばいかん)という煙で燻す作業です。くべる木々は樫の木が使われていて工場の裏に山のように積まれています。鰹は工場内に5000匹もいて1匹5kgもしますが、燻したら水が出ることによりなんと1kgにまで減るそうです。燻す焙乾室は100℃もあり、息苦しくサウナのようでした。最近は下で薪をくべるだけのやり方よりも火力が安定するようファンを取り入れたそうです。
出来立ての“生鰹節”をなんと味見させてもらいました。いわゆる鰹節よりも味は淡く、少し温かくて柔らかいささみのような食感でした。サンドペーパーでの表面削りを経てこの工程で終了したものを荒節といいます。
▼天日干し
次は枯れ節のための黴付けです。黴は20日間も散布するそうですが、種類はなんとAspergillus、Penicillium(青かび)などだそうで、仕事上馴染みのある真菌で、ある意味、親近(真菌?)感がわきました。黴付け倉庫はさすがに少し湿ったmossyな臭いでした。
それが終了するといよいよ最終段階の天日干しです。3〜4日から20日間も行うそうで、この作業を3〜4回繰り返したものが本枯れ節です。毎日お天気が気がかりなことは言うまでもありません。結局全ての工程全体で4ケ月ほどもかかるそうです。
▼枕崎お魚センター
▼鰹船人めし
見学後、枕崎お魚センターで本かつお、腹皮、鰹ふりかけなど買い物をした後は、薩摩明治蔵「花渡川ビアハウス」にて食事をしました。定番は枕崎鰹船人(ふなど)めしです。枕崎特選銘茶で炊いたご飯の上に、ぶえん(無塩=新鮮な)鰹を使用した鰹の切り身、枕崎産の鰹節、鰹せんべいをトッピングして、枕崎産本枯れ節の出汁をかけてお茶漬けのようにして食べます。Show-1グルメグランプリで殿堂入りしているメニューです。
令和最初のセミナーでしたが、枕崎まで(意外と車で1時間)来た甲斐がありました。鰹らしい生臭さ、鰹節、燻した煙、黴といくつもにおいを堪能しました。全国から料理人も見学に来るそうで、お茶、焼酎、黒酢などと並ぶ鹿児島の代表的な香り文化と思います。オートメーション化になることなくいつまでも手作業で続けて行ってほしいです。