第44回 平成25年6月9日 8:00〜16:00
ウエストコム佐多農園・工場(院外)
今回は参加者18名でレモングラス蒸留体験を目的として、大隅半島南端にある佐多町のウエストコム社(黒木隆之代表)の農園・工場を訪問しました。
元々は大阪に営業本社がありますが、近年、佐多の温暖な気候を利用して、ハーブ栽培を元にハーブ商品に着手し、「佐多岬レモングラス」をブランド化しようと勢いある化粧品会社です。
当院セミナーでもお馴染みの川畑真喜子Nsが顧問を勤めており、昨年の巴里市場でのハーブセミナー(第40回)に黒木代表が御参加頂いた縁で今回の見学が実現しました。
当日朝、鹿児島市の鴨池港に現地集合し、午前8時発の垂水フェリーにて、垂水港に到着後、佐多交通の貸切バスで1時間30分かけてウエストコム社の農園に到着し、黒木代表と合流しました。本土最南端の佐多岬ロードパーク入り口近くにあり、周囲の風景はトロピカルムード一色です。
あたり一面のレモングラス畑で、早速その場でレモングラスの葉を折って香りを嗅がせてもらいましたが、鮮烈なレモンの香り満載でした。
レモングラス(東インド産)は別名レッドグラスオイルと呼ばれ、イネ科で主成分はゲラニアール(51.2%)ネラール(30%)で、効能として血管拡張作用(血圧低下)が謳われています。
香りが類似するハーブとしては他に、レモンバーム(別名メリッサ しそ科 主成分ゲラニアール)、レモンマートル(俗称:レモンハーブの女王 フトモモ科 95%以上がシトラール)、レモン(ミカン科 主にd-リモネン)、ユーカリレモン(フトモモ科 主成分シトロネラール、シトロネロールなど)などがあります。
あいにくの小雨降る中、各自刈り取りをさせてもらいました。
その後、10分ほどバス移動して自社工場に到着しました。
水蒸気蒸留装置を見るのは5年前のNARDの山梨ツアー(第14回セミナー)以来です。
水蒸気蒸留法とは「互いに混じり合わない化合物を混合しても、蒸気圧は各成分の蒸気圧に等しい」という性質を利用して水の沸点に近い温度で高沸点の化合物を留出する方法です。
原料植物をいれた蒸留釜に下部から水蒸気を直接通し、植物の多数の芳香化合物と水の蒸気圧の和が蒸留釜内部の圧と等しくなった時に芳香化合物が水蒸気とともに留出します。留出した蒸気を冷却器で凝縮させると油層と水層の上下二層に分離し、ほとんどの精油は比重が軽いので上層に分離してきます。
一方、下層の水性成分は植物原料から留出してきた水溶性化合物を共有し、芳香蒸留水(ハーブウオーター)と呼ばれ、化粧品などに使われます。
この方法の利点は、揮発性化合物のみを水の沸点付近の温度で分離可能なので沸点が350℃位の化合物でも蒸留可能なことと、熱による化合物の変化が比較的少ないことです。欠点は揮発性が大きい物質を逃がしてしまう恐れがあることです。
具体的な製造機種とその作成過程ですが、まず製造機はポルトガル製アラビック社の銅製蒸留釜でインターネットでも購入できるそうです。1つの行程に要する時間は2時間30分程で、芳香蒸留水を2リットル作るのに精製水4リットル、レモングラス葉は500グラムを要し、その上、採取される精油はごく微量と、割りに合わない苦労が忍ばれました。
説明・工程見学終了後はショップで月桃の石鹸を購入しましたが、他にはバスソルト(レモングラス&マンダリンオレンジ)がオレンジピールの相当量入っているところが私のお気に入りです。
昼過ぎに工場を後にして、近くの住宅地の石垣群に案内され、派生している月桃の香りを嗅ぐ機会に恵まれました。
今まで精油やハーブティーにおける匂いの経験はありますが、野生の月桃は初めてで、独特のスパイシー且つオリエンタルな香りを堪能しました。
その後、史跡佐多旧薬園に立ち寄り、初めて木になっているライチ(レイシ)も見ることができました。写真は石碑前での参加者全員での記念写真です。後ろは本土では極めて珍しいヤシの木です。フェニックスではありません。
ランチはTV番組で全国優勝以来、いまや県外客も殺到しているという「時海(ときみ)」の海鮮丼を食しました。
丼の上にあふれんばかりと乗ったあじ、さば、かんぱち、とびうおなど、天然の刺身に舌鼓を打ちました。
今回、フェリー+バスでの長時間の移動は少しきつかったですが、プライベートでは中々行けない場所なので、十分な満足感を得ることができました。
ウエストコム社には10月の日本アロマセラピー学会熊本総会でも出展ブースとドリンクコーナー(佐多岬レモングラス)でお世話になりますが、将来は佐多町における"香り"による町おこしとなるよう期待したいものです。